ブライアント4連発〜近鉄バファローズ名勝負4〜
1989年、前年の10・19の悔しさを晴らすべく、王者西武ライオンズに戦いを挑んだ近鉄。しかし、この2強の戦いに新生オリックスブレーブスが割り込み、前年を凌ぐ熾烈な優勝争いとなる。シーズンはいよいよ10月に入り、近鉄はこの3つ巴の争いの中で苦戦を強いられ、3位自力優勝の可能性が消滅した状態で敵地西武球場での西武3連戦を迎える。10月10日の初戦相手エース渡辺久信を何とか攻略し先勝、自力優勝の可能性が復活する。しかし依然として西武断然有利の状況は変わらず、翌日が雨で試合が流れ、ダブルヘッダーとなって10月12日に組まれることになった。昨年の10・19に続き、雌雄を決する戦いはまたもダブルヘッダーである。
第1試合の先発は2年目の高柳出巳。連勝しか許されない近鉄だけに大方の予想はエース阿波野秀幸であったが仰木監督得意の奇襲先発である。しかし、高柳がその期待に応えられず、2回終了時点で0-4。相手は天敵郭泰源。この日も3回まで1安打投球。流れは完全に西武リーグ5連覇へ傾いていた。
4回、ブライアントのソロアーチが飛び出す。しかし5回に1点をまた追加され1-5。再び4点差。球場の近鉄ファンに重苦しい空気が流れる。
6回、思わぬところからこの試合最大の見せ場がやってくる。先頭の真喜志康永の四球を足がかりに大石大二郎・新井宏昌が連続ヒットで無死満塁のビックチャンスを作る。そしてここで迎えるバッターはブライアント。球場がにわかにざわめきはじめる。郭の投じた初球だった。ブライアントの振り切った打球はライトフェンスによじのぼった平野謙一、そして西武ファンの呆然とした表情に見送られ、右中間スタンドへ消えていった。驚愕の同点満塁ホームラン。近鉄ベンチは一気にお祭り騒ぎとなる。
こうなると完全に流れは近鉄ペース。焦る西武ベンチは8回からエース渡辺久信をスクランブルで登板。迎える先頭打者はブライアント。渡辺久信の渾身の速球をこの男はピンポン玉のように打ち返す。打球は打った瞬間にそれとわかる特大ホームラン。ブライアントが一人でチームの全得点を叩き出した。しかも西武の誇る2枚看板投手からである。西武ベンチの衝撃は計り知れないだろう。近鉄はストッパー吉井理人が後続を締め、最高の形で第1試合を制する。
20分後、興奮冷めやらぬ中、第2試合がスタート。2-2の同点で迎えた3回。ブライアント、またこの男がやってくれる。第1打席は敬遠されたがこんどはセンターバックスクリーンへ叩き込んだ。流れというのは恐ろしい。緊張の糸が切れたのか西武投手陣はこの後、近鉄打線に積年の悔しさを晴らすかのごとくつるべ打ちにあう。終わってみれば14-4で近鉄が圧勝。3連戦前には圧倒的優位だった西武の自力優勝が消滅。翌日オリックスがロッテオリオンズに苦杯をなめ、近鉄にこの年初めてのマジックナンバー「1」が点灯した。そして翌14日、本拠地藤井寺球場で近鉄は歓喜の瞬間を迎えることとなる。